まだ言葉を知らない幼児は、泣いてその言葉に代える。 まだ表現を知らない青年は、抗ってその表現に代える。 自らを際立たせ、その存在を内外に認識させる行為。同一性(アイデンティティ)を獲得し、それを慥かなものへと発展させることに、私たちの春は費やされる。同一性確立の道は困難で、その第一は大人たち への反抗から始まる。そして時間を稼ぎつつ、その手法を洗練させ、やがて青年は夏を迎える。 しかしその懊苦は必ずしも周囲に理解されず、時として自らをも傷つける。 心当たりはないだろうか。